こんにちは、大判プリントの達人です。
今回はポスターやパネル印刷でよく使用される「厚手マット紙」について解説していきます。
厚手マット紙とは何?
厚手マットとは、印刷物に使用される紙の一種で、紙の表面にマット加工のコーティングを施した用紙です。
名刺やパンフレット、チラシ、ポスターなどの広告媒体によく使用されています。
弊社で使用している厚手マット紙は厚さ0.20mm。
ある程度厚みがあるため、しっかりしていてコスパを抑えたい方にお勧めしている用紙です。
厚手マット紙は表面のコーティングにより光の反射が抑えられるため、遠目からでも印刷したデザイン見やすいことが特徴です。
また、インクの発色が良く、色の再現度が高いのでイラレなどで作成したデザインに近い色味になる傾向があります。
試しに厚手マット紙のコーティングをはがしてみましょう。
左:厚手マット紙本来の表面 右:表面のコーティングをはがしたもの
左はコーティングのおかげでさらさらした質感です。
右のコーティングをはがしたものは、画用紙の様に少しザラザラしています。
色鉛筆で線を引いてみたところ、コーティングを剥がした方はしっかりと線を引けました。厚手マット本来の方は線を引いた時少しツルっとしていて色が弾かれている感覚でした。
見比べると左の方が色が薄くなっていることが分かります。
厚手マットは印刷用の用紙のため、マジックなどでの書き込みはできますが色鉛筆やクレヨンでの書き込みは少し不向きです。
比較してみよう
実際にイラレで作ったデータを出力してみました。
印刷するのは、大判プリントの達人の公式キャラクター、大判番長くんです。
出力データ
厚手マットに出力したもの
データよりも全体的に濃くはっきりと出力されています。
印刷物、画面上のデータとして見ると少し暗い印象に見えますが。実際に肉眼で見ると色味に大きな差は無く綺麗に印刷される印象を受けます。
今回はデザインがキャラクターのため厚手マット紙との相性が良いですが、
パステル調の色味、デザインはのっぺりとした印象になることも…
柔らかい雰囲気の表現を出したい場合は「お試し印刷」オプションを検討ください。
お試し印刷とは
くすみカラーの表現はマットの質感と相性が良い傾向があります◎
厚手マット紙は光を当てた時にどの程度反射しないのでしょうか?
ためしに照明を直接当てるフラッシュ撮影をしてみました。
光の反射は見られませんでした!
室内で照明が当たっていても白飛びせずはっきりと見えました。
マット紙は光の反射が抑えられているので、写真映りも良く撮る場所を選びません。
照明が強いところで使用するにはぴったりですね。
一方、写真、人物、食べ物のようなある程度ツヤ感が大切なデザインは、厚手マット紙に印刷した際、チープな印象になってしまう恐れがあるため注意が必要です。
厚手マット紙の弱点
安価なためバランスの良いメディア(用紙)ですが、良いことばかりではなく少し注意が必要な点もあります。
1つ目:インクが馴染みやすい
発色がよくなるというメリットでもありデメリットでもあります。
濃い色は色むらや色移りがしやすく、馴染みやすいが故に水に弱い性質があります。
水を垂らしてみるとシミになり、また濡れた直後に拭き取ると水がすぐに浸透しインクを薄め伸ばしてしまい、にじみの原因にもなります。
もし濡れてしまった場合は押さえて吸い取るように拭き取ることで、乾いた時にシミになるのを防げる場合もあります。
2つ目:傷に弱い
マット調なため、傷が目立ってしまうというデリケートな面もあります。
このようにペンのキャップで擦った所は白っぽい傷になりました。鋭利な部分で擦れた場合も同じようになります。
爪などで強くこすらないように注意して取り扱うことが大切です。
弱点克服!?
扱いを誤るとせっかくの印刷物が悲しい状態になってしまいますよね。
そんな厚手マット紙の弱点をカバーしてくれるのがラミネート(表面保護)です
ラミネートにはマット、グロスの2種類があり機能性はどちらも同じです。
表面がサラッとしているのかツヤっとしているのか光沢感の違いがあります。
ラミネート加工は表面保護のため、あるのとないのでは印刷面の安心感が違います。
ただ、ラミネートは1枚「膜」を張るイメージですのでここで気になるのは色味です。
以下2枚の写真を見てみましょう。
左:厚手マット 右:マットラミ
左:厚手マット 右:グロスラミ
マットラミは半透明のフィルムで覆うイメージで色味のトーン落ち、深みが出て落ち着いた印象になります。
対してグロスラミは透明のフィルムで覆うイメージです。光沢感が出るので全体的に明るい印象になり鮮やかに見えるようになります。
光沢感で選ぶなら
「光沢感を出したい!」という視点のみで用紙を選ぶなら、光沢紙がおすすめです。
厚手マット紙で光沢感を出したい場合は、ラミネート加工が必要ですが、
光沢紙ならラミネートをかけずにつやのある質感を実現できます!
ラミネート加工をしない場合は印刷面の取り扱いには注意が必要です。
また、デザインにも左右されますが厚手マット紙の方が光沢紙・半光沢紙よりもギラつきが少なく、見やすい傾向があります。
こだわりたい場合は事前に色校正(お試し印刷)をしておくと安心です。
もちろんラミネート加工は印刷面をコーティングしているので水にも多少の傷にも強く、防汚性に優れています。
しっかり水をはじいています。
拭き取っても印刷が滲んでいません。
テープだって貼れます。
はがしても盤面がはがれません。
盤面が破れる心配はないので画鋲が刺さらない所への印刷面に直接テープで貼り付けても大丈夫!
最後に、水性ペンで赤丸を書いて直後に拭き取ってみました。
微かに赤が残っています。
そこからインク落としで拭いたところ綺麗に赤色がなくなりました。
本来は表面にペンなどでかき消しできるラミネートでは無いため、繰り返しの使用は推奨していません。
まとめ
今回は厚手マット紙について紹介いたしました。
最後にポイントをまとめました!
厚手マット紙のポイント
- ある程度厚さがあり、コスパにも優れている
- 表面にマット加工コーティングが施され、インクの発色が良く・色の再現度が高い
- 光が反射されにくいため、強い照明のある屋内でも撮影OK
- アイコンやイラストのデザインは特に相性が良い
- 濃い色は色むらや色移りがしやすく、水に弱く傷にも弱い
- ラミネート加工でさらに使い勝手・耐久性が高くなる
ラミネート加工は追加料金となる印刷所が多いため、価格や仕様用途・期間等を考慮して検討してみてくださいね。
※裏はラミせず厚手マットのままなので、水濡れにはご注意ください。
おまけ
厚手マット紙以外の、光沢紙・半光沢紙・合成紙などと比較したブログもあります!
▼用紙ごとにおすすめの使用シーンや選び方をご紹介しております
ポスター用紙の選び方は?おすすめの素材・使用シーンをご紹介!
▼紙×ラミネートによる色の違いについて知りたい方はこちらもおすすめ
「紙×PPラミネート」~掛け合わせによる色味の違いについて検証してみた!~
皆さんの用紙選びの参考になりますように。