耐候性があるから屋外でもへっちゃらな印刷方法「溶剤印刷」
こんにちは、「大判プリントの達人」です。
「印刷」と聞いて一番に思い出すのは、身近な家庭用プリンターやコンビニのプリンターですよね。
実は大型のポスターやパネル、バナーの盤面など、大きなサイズを出力する際はまた違う方法があることをご存じでしょうか?
今回は、数ある大判印刷方法の一つである「溶剤印刷」に注目してご紹介いたします!
溶剤印刷とは
溶剤印刷とは、専用のインクがメディアの表面を溶かして侵しながら、色を浸透させる印刷方法です。
印刷後、プリンターのヒーターでインクの有機溶剤を発揮させることで、インクがしっかりと定着します。
メディアの中にしっかりとインクが染みこみ定着するため、
紙製のメディア以外の塩化ビニールシートやターポリンなどにも印刷することができます。
複数のインクでカラーの再現性アップ
印刷で一般的なカラーといえば、C(シアン)M(マゼンタ)Y(イエロー) K(ブラック)の4色。
しかし、溶剤印刷はCMYKの4色以外のカラーを使用することができるのです!
大判プリントの達人では、現在CMYKの4色のほかに 「オレンジ」「レッド」「ライトシアン」「グリーン」「グレー」の5色を使用した計9色で印刷を行っています!
複数のインクを使用することで、カラーの表現が豊かで再現性が高い出力を実現できます!
※印刷機によって異なる場合があります
耐候性が優れた溶剤印刷!水にも強い
溶剤印刷の最大の特徴の1つは何といっても耐候性・耐水性に優れている点です。
雨・雪などの水気にも強く、水性インクのように雨によって印刷がにじむこともありません!
光による色褪せや劣化も少ないため、屋外の広告物(屋外用のポスター、幕等)の出力によく使われています。
環境に配慮したインク
現在、大判プリントの達人で使用している印刷機の1つが【EPSON S80650】です。
屋外用のポスターやバナースタンドの印刷で使用しています。
また、インクは「UltraChrome GS3」という溶剤インク特有の臭いを低減したものを使用しています。
「米国環境基準 GREENGUARD Gold」という認証も取得しているインクで、環境にもやさしい印刷が可能となります。
GREENGUARDとは?
室内環境における揮発性有機化合物(VOC)の排出測定試験に基づいた認証です。
UltraChrome GS3 インクは、より厳しい基準値を設けているGREENGUARD Gold認証を取得しています。
溶剤印刷は特有のにおいがあり、揮発性の有機溶剤を使用した印刷のため
どうしても環境負荷問題と切っても切り離せない関係にあります。
弊社でも、プリント事業を通じて環境問題解決の一助となれるよう日々努めていきたいと思います。
溶剤印刷のまとめ
溶剤印刷についてわかっていただけたでしょうか?
簡単に溶剤印刷の特徴を3点にまとめました!
- インクがメディアにしっかりと浸透して色が定着する
- 対候性・耐水性に優れており、屋外使用に適している
- CMYKの4色以外のインクを使用することで、カラーの表現が豊か
UV印刷と比較してみました
UVとは紫外線を照射することで、瞬時に硬化・乾燥する「UVインキ」を使った印刷手法をUV印刷といいます。
印刷方法の違いで、どのような仕上がりの差が生じるのでしょうか?
その前に、簡単に今回比較する溶剤インクジェット印刷と、UVインクジェット印刷の違いをまとめました。
項目 | 溶剤インクジェット印刷 | UVインクジェット印刷 |
色数 | 9色 | 4色 |
屋外耐候性 | ◎ | ◯ |
耐屈性 | ◯ | △ |
立体物への印刷 | × | ◎ |
インク匂 | あり | あり |
溶剤印刷はインク数が4色以上(CMYK+オレンジ・レッド・ライトシアン・グレーの計9色)に対し、UV印刷はCMYKの4色のみでの表現です。
今回はターポリンのメディアに印刷して比較してみました。
溶剤印刷とUV印刷でどのような違いがみられるのか、見ていきましょう!
虹色デザイン
全体的に発色がよく、UVインクの方は全体的に薄めな印象となりました。
UVインクはメディアの上にインクをのせ、硬化させて印刷するため光が反射して薄くみえてしまう場合がありました。
溶剤インクは全体的に発色がよく、特に水色・オレンジ・赤の再現性が高いことが分かります。
一方、両印刷方法ともに濃い青はデータよりも強く見える傾向がありました。
赤い紅葉
見比べるとUVインクよりも紅葉の赤が溶剤の方が出ているのことがわかりました。
レッドインクで色域が拡大し、より再現性が高くなっているのですね。
また、グレーインクの影響で使っていないものに比べて色に奥行きもあり、色転びも抑えられます。
お肉の断面
お肉はUV印刷に比べて赤身の色が強く出て、よりおいしそうな見た目になりました。
オレンジと葉っぱ
オレンジインクの力が発揮される!と思ったのですが、大きな違いが見られませんでした。
葉っぱの緑や影の部分などはグレーインクの影響で、溶剤の方がメリハリのある発色になりました。
木と空
ブルーやグリーン系の色も比較してみました。
インク濃度や印刷機の個体差で色が違うように感じられます。
溶剤はグレー等ほかのインクの影響で落ち着いた深みのある発色に、UVインクの方が青や緑がはっきり目に入ってくる印象になりました。
風鈴と木目
いろいろなカラーが含まれる場合は、より違いが分かりやすいですね。
背景の木目調はグレーインクの影響で極端な赤身が抑えられ、下の赤い風鈴は赤がUVより際立っている仕上がりになりました。
UVは全体的に赤みのある印象でした。
おまけ:メディアによる発色の違い
今回はターポリンに印刷を行いましたが、実はメディアによっても発色や仕上がりは異なります。
以下写真の左はターポリン、右はPET素材に溶剤印刷を行ったものです。
風船の部分が特に違いが分かりやすいと思います。ターポリンはオレンジや青色等、全体的に鮮やかな発色になります。
また、溶剤印刷はメディアに浸透して印刷を行うため、素材の質感がダイレクトに伝わります。
まとめ
今回は溶剤の特徴とUV印刷との色を印刷してみて簡単に比較してみました。
最後に溶剤印刷の特徴3点をおさらいしましょう!
- インクがメディアにしっかりと浸透して色が定着する
- 対候性・耐水性に優れており、屋外使用に適している
- CMYKの4色以外のインクを使用することで、カラーの表現が豊か
溶剤印刷は、複数の色を使用することで、奥行きのある仕上がりとなることが分かりました。
ただ、比較する印刷方法やメディアによっても発色の違いがあります。
またUV印刷も発色の良い印刷方法のため、優劣ではなく印刷機の特徴としてとらえていただければ幸いです。
色味にご不安のある方は、「お試し印刷」で本製作前に一度色味をご確認いただくことをお勧めいたします。
今回ご紹介した印刷機は、ホワイトやメタリックシルバーなど特殊インクと呼ばれるインクもあるので今後特殊インクを使用した印刷も検証できたらと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!